紅の葬送曲
「単刀直入に言うわ。浅井紅緒さん、凌の補佐官を辞めてくれないかしら?」
「勝手なことを言わないで下さい。彼女は俺が選んだ補佐官です。他人にとやかく言われる筋合いはありません」
「凌、貴方も貴方よ。小鳥遊姉弟とは距離を置きなさいと何度も言ったわよね?あの二人はあの男の姉の孫なのよ」
寿永隊長のお母さんは怖い目でこちらを睨んでいた。
私だけでなく、小鳥遊君達姉弟とも関係を絶ちきるように言っている。
多分、この人は≪切碕≫の近親者を心の底から嫌悪しているのだろう。
実の子供である私なら分かる。
でも、切碕の姉の孫である小鳥遊姉弟までそんな風に嫌うのはどうかと思う。
「あの人は小鳥遊の子供や孫達に才能を認め、近くに置いていた。でも、私は違う。あの才能は作られた人間から継いだ異質の才能。そんな才能を持つ者を──」
「跡継ぎの傍に置くなんて出来ない──。そう言うつもりならその口引き裂いて、潰しますよ」
ドスのきいた低い声で遮った寿永隊長のその言葉に、背筋がぞくりと震えた。
殺気を感じるなんて初めてじゃない。
でも、今感じてる殺気はこれまでとは違ったモノだ。
今までモノが憎しみから来る殺気なら、今のは悲しみを噛み殺し、それを堪えるかのような殺気。
胸が張り裂けそうなくらいの悲しみが彼から感じられた。