紅の葬送曲
「奥様、凌様。少し宜しいでしょうか?」
メイドは虚ろな目でこちらを見ている。
「後にしてくれるか?今は──」
「無理です、──もう手遅れです」
涙を流しながらエプロンを外したメイドの体には時限爆弾が仕掛けられていて、着々と時間が減っている。
「何でそんなものが貴女の体に……っ」
彼の母親は息子から言われた言葉に動揺したままメイドを見た。
「分かりません……。宅配業者の対応をしていたら意識を失って……起きたらこれが体に巻きつけられていて……どうしたら良いか分からなくて……」
寿永隊長は舌打ちをつくとメイドに駆け寄り、時限爆弾を見た。
私も彼に続くようにメイドかけよって、爆弾を覗き込む。
時間を刻んでいるディスプレイの下には外国語と思われる言葉で何か書かれている。
「《Es gibt keine Veröffentlichungsmethode. Löse es, wenn du es lösen kannst》」
「何語ですか?」
「ドイツ語だ。意味は≪解除方法はない。解けるなら解いてごらん≫。……紅斗達の仕業だろうな」
彼はメイドを見上げるとはっとして、急に立ち上がると彼女の着ている服を力任せに破った。
「寿永隊長!?」
「きゃ……っ!」
露になる胸元を押さえるメイドの腕を彼は掴んで防ぐと、険しい顔をした。
私もそれを見て言葉を失う。