紅の葬送曲
江のことだから俺の考えていることは見抜いているはずだ。
俺は江を一瞥すると、再び資料に目を落とした。
すると、目の前に琥珀色のお茶が差し出される。
顔を上げれば、そこには江に良く似た女が立っていた。
「……頬をひっぱたかれたというのに、何を考えているんですか?」
「菖(ショウ)」
江の一つ年上の姉で、俺の補佐兼付き人でもある女──小鳥遊菖は江とは違った険しい目で見下ろしてくる。
「別に」
菖から視線を外して置かれたティーカップを取ると、琥珀色のお茶を飲んだ。
リンゴの香りと甘さの感じる紅茶だ。
そんな反応の薄い俺に、菖は呆れたようにため息を吐くと弟の元に行って紅茶を差し出した。