紅の葬送曲
Ⅴ
とある廃屋の裏庭にて。
「凌君が動き出したか……」
廃屋には二つの影、以前裏路地で話していた二人の青年だ。
彼らは辺りに警戒しながらもお互いの情報を共有している。
二人が会えるのは皆が寝静まる真夜中で、その時間も長くはない。
だからこそ、共有するための情報は要点をまとめて話さなくてはならなかった。
「ああ、寿永は小鳥遊の娘に俺を探らせてる。お前と俺の関係やあの男のこともそのうちバレる」
「バレても構わないさ。困るのは僕や君じゃない、あの男だ」
赤目の青年は炎のように赤い目に、冷たい光を宿していた。
彼がその目を向けるのはただ一人。
己と最愛の妹を引き離し、味方になってくれた男の人を殺した男──。
「あの男だけは絶対に許さない。絶対殺してやる。紅緒を……寿永さんを苦しめたあの男だけは……」
「紅斗……」
もう一人の青年は赤目の青年を心配そうな声で呼ぶ。