紅の葬送曲
「浅井秀人……私が貴方がたの味方だった寿永周を殺したからですか?」
明晴の楽しそうな呟きは彼には聞こえていなかった。
赤目の彼にとって明晴は仇であり、仲間でもある。
だが、明晴にとっては違う。
明晴にとって赤目の彼は駒にすぎない。
「紅斗に紅緒、あの方の復活のためにはあの二人の息女が必要だ……」
息子の方は己の近くに、娘の方はかつて娘として傍に置いていた。
今はとある理由で叶わないが、もうじき傍に来る。
二人を傍に置きたい理由はただ一つ。
二人の父親を甦らせる。
明晴が崇拝し、讃えたたった一人の≪神≫を──。
「あぁもうじき貴方に会えます……、切碕様……」
空を見上げ恍惚とした顔をする明晴の顔を月が照らし、見下ろしていた。
その冷たい白い光で──。