紅の葬送曲
「まったく、もう!寿永隊長は何処に行ったの!?」
私は翔鷹本部の階段を下りながら、忽然と姿を消した上司の愚痴を溢す。
遡ること10分前。
私は寿永隊長に頼まれ、お茶を淹れに給湯室へ向かった。
ちょうど美味しいクッキーを小鳥遊君が焼いて持ってきてくれたからそれをお茶菓子に、執務室へ戻った。
でも、そこには彼の姿は消えていた。
「クッキーは良いとして、紅茶が冷めちゃうでしょうが!あぁ、高級茶葉を無駄にしてしまう……」
翔鷹で飲んでいるコーヒーと紅茶は寿永隊長のこだわりという名の肥えた舌のせいで、本場のものだ。
玉露は宇治、紅茶はインド、コーヒー豆はブラジル等……。
もう一般人と考えと味覚が違いすぎて嫌になる。
頭を抱えながら一階のエントランスを歩いていると、来客を知らせるインターホンが鳴った。
「あ、今日は知栄さん休みだっけ……」
エントランスのすぐ傍が諜報課だからいつもは知栄さんが来客を受けてくれる。
でも、今日は休みだからいる人で賄わなくてはならない。