紅の葬送曲


「それで、アリスさんからの使い物は?」




寿永隊長はティーカップを取ると、一口啜った。





「……これです」




玖下さんは胸元の内ポケットから一通の封筒を取り出すと、寿永隊長に差し出した。




それを受け取った寿永隊長は封筒を開け、中の書類に目を通すと口角を持ち上げる。





そういえば、昨日寿永隊長は藤邦の当主に何か頼みごとをしていた。




その結果が届いたらしい。




「浅井、お前の思い付きは正しかったみたいだぞ」




「え?それって……」




「浅井秀人のDNAと安倍明晴のDNAが型が一致した。ついでに調べてもらったが、お前と奴の血縁関係は立証されなかった」




……つまり、お父さんと私は縁者ですらなく、浅井秀人と安倍明晴──同一人物だった。




ショックなのに、何故か不思議と納得してしまった。




お父さん……浅井秀人が私と紅斗を狙い、寿永周さんを殺す記憶を思い出した時点でそんな気がしていたから。





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