紅の葬送曲


ふと、頭をポンポンと撫でられる。





「泣きたいなら泣いて良い。誰も責めたりしないから」





頭の上から聞こえるのは彼の声。





顔をあげなくても分かる。





寿永隊長が頭を撫でてくれてるんだ。





「……玖下も悩んで悩んで今があるんだ。玖下だって20年前まで自分が切碕の息子だって知らなかったんだ」





その事実を知ったとき、お兄ちゃんはどうしたんだろう?







「……玖下は≪国に飼われた犬≫だった」






すると、寿永隊長はお兄ちゃんのことをポツリポツリと話し始めた。






≪国に飼われた犬≫……、それは重犯罪を犯した未成年者を法では裁かず、犯罪者を裁く犯罪者として国の保護下にいた人物達を指す。





これこそ20年以上経った今でも公にはされておらず、三名家と当時を知る警察の上層部と官僚、翔鷹の隊員しか知らない事実だ。




私も最近知ったことだけど、翔鷹の諜報課の知栄さんがそうらしい。





「……玖下が≪飼われた犬≫になったのは優しすぎたからだ。弟がしてきたことを隠し、終いにはその弟が母親を殺した」




お兄ちゃんに弟がいたんだ……。




つまり、私からすればもう一人の異母兄になる。






< 266 / 541 >

この作品をシェア

pagetop