紅の葬送曲
Ⅱ
「あの娘でしょ?寿永様にビンタしたの……」
ええ、私ですけど何か?
「えー!寿永様にビンタとか恐れ多いで絶対出来ないー」
絶対出来ないことをやってしまいましたが、何か?
私は廊下を歩く度に向けられる好奇的な目にうんざりしていた。
ほんの数時間前にしてしまった自分の過ちが恐ろしい。
あの寿永にビンタだよ!?
日本で知らない人がいない程で、皇室の次に高貴と言われる三名家の一つの次期当主にビンタだよ!?
もう私、国外追放されるって……。
「あぁ……本当に短気なんだから……」
自分の短所である短気なところが嫌になり、項垂れた。