紅の葬送曲
こんな残虐的な殺人鬼に殺される訳にはいかない。
こんな奴らに殺されるくらいなら……。
女は口を少し開くと、歯と歯の間に舌を挟み込む。
「!?楊蘭、その女に猿轡を!今死なれては──」
「……馬鹿、もう遅い……」
そして、自らの舌を噛みきった。
こんな奴らに殺されるくらいなら……。
──自ら命を絶つ。
意識が遠退いていく。
大丈夫だ、私の調べ上げた情報は≪彼ら≫があの人に届けてくれる。
私がいなくても、あの人を支えてくれるあの子がいる。
「凌……、後は……お願い……ね……」
掠れた声で命を懸けて仕えた彼に託す言葉を呟くと、彼女の視界は暗転する。
彼女──、小鳥遊菖の意識はそこで永遠に途切れてしまった──。