紅の葬送曲
すると、隣にいた芦葉さんが私の肩に触れてきた。
「……君は僕が昨日宙をじっと見ていたことに違和感を覚えたかい?」
何で、そんな問いを今?
動揺して答えられずにいると、芦葉さんは小さく笑った。
「僕はね、人には見えないものが見える」
「そ、それって幽霊とかですか?」
ようやく絞り出した声も震えてしまう。
「そう。でも、僕が見えるのは死んだ人の霊じゃない。≪これから死ぬ人≫霊なんだ」
これから死ぬ人の霊?
──っつまりは……。
「昨日芦葉さんが見てたのって……」
「……菖が言っていた通り聡い子だね、浅井さん」
私が全てを理解したと判断した芦葉さんはそれ以上何も言わなかった。
昨日、芦葉さんが見つめていたのは小鳥遊さんの霊だ──。