紅の葬送曲
「そんな……」
「浅井さん!」
足から崩れ落ちそうにる私を芦葉さんが支えてくれる。
寿永隊長が芦葉さんだけを残したのは多分彼が≪見えている≫と判断し、それが誰なのか聞くため。
そして、恐らく私が知らないところで帰ろうとしていた矢賀さん達を引き留め話し合い、敵の正体を突き止めたのだろう。
──彼らは分かっていたんだ。
彼女が死ぬと分かっていても助けられないことを──。
だから、彼女の安否よりも敵の捕獲を優先した。
それは端からみれば薄情なのかもしれない。
でも、敵の捕獲を優先したことで多くの命を救えるかもしれないのだ。
一人の仲間の命と大勢の他人の命。
彼らは双方を天秤にかけ、より多くの人を救うことを選んだ。
一人の仲間の命よりも大勢の他人の命を選んだ──。