紅の葬送曲
その男はゆっくりと近付いてくると、浅井の額に自分の額を当てた。
「おい、お前──」
浅井とその男を引き離そうとしたら、その男が伴ってきたもう一人の男に阻まれた。
「寿永隊長、お静かに」
「お前は……」
もう一人の男に阻まれたと思えば、俺は引き離されるようにして浅井から離された。
「紅緒、気をしっかり持て。大丈夫だ、落ち着くんだ」
額を当てながら語りかけるように言う男に、浅井は拒まなかった。
その男は彼女が嫌悪する相手であり、血を分けた兄でもある。
だからだろうか、あれだけ暴れていた浅井が落ち着きを取り戻していた。
「紅斗……。それに、琉ちゃん……」
浅井の言葉に微笑んだ男──紅斗は司馬琉介を伴って、突然翔鷹に現れた。
≪凌side end≫