紅の葬送曲


「寿永隊長」




すると、彼を呼ぶ声がした。




寿永隊長が視線を向けた先に私も向けると、そこには小鳥遊君とそのご両親がいた。





小鳥遊姉弟の父親は言わずもがな警視総監で、母親も祖父も警察関係者だ。





「私の命じた任務で菖の命を奪ってしまいました。申し訳ありません」




寿永隊長は軍帽を外すとご両親に深々と頭を下げた。




「……頭を上げて下さい、凌様」




頭を下げた彼に声をかけたのは小鳥遊姉弟の母親──七砂さんだった。




でも、彼は頭を上げようとしなかった。




「菖は生前、貴方に仕えられて幸せだと言っていました。貴方の為なら命をかけられると言っていました」




七砂さんの声には強さがあった。




最愛の娘が亡くなったのに、彼女は気丈に振る舞っている。





小鳥遊さんは私に補佐官を代えられたとき、あからさまに私を敵視していた。




それは寿永隊長を誰よりも敬愛していて、守りたかったからだ。





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