紅の葬送曲
七砂さんは目を細めると小さく笑って、棺に近付くと小鳥遊さんの頬に触れた。
「本当に幸せそうな顔……。最期に貴方の役に立てて嬉しかったんですよ、菖は……」
冷たくなってしまった娘の頬を撫でる姿は見ているだけで胸が苦しくなる。
「……この子は本当に天河にそっくり。最期まで人のために生きて……、姪だからってそこまで似なくても……良かったのに……」
七砂さんの声が震え、頬に涙が伝う。
「七砂……」
「姉さん……」
そんな七砂さんの肩を小鳥遊警視総監が抱き、小鳥遊君はその場に膝をついて肩を震わせていた。
ふと、参列者のひそひそ話が耳に届く。
「奥さんの弟さんに続いて、娘さんまで死ぬなんて呪われてるのかしら……」
「呪われてるのよ、きっと。ほら、奥さんってあの切碕の血筋らしいじゃない」
「怖いわねぇ……」
よくこの場でそんなことが言えるものだ。
……人の死を悼む場所でさえも人は非情になれる。
悲しみや憐れみを抱きながらも、蔑みや嫌悪の感情を忘れない。
皆他人事だからだ。