紅の葬送曲


この世の中に人以上に怖いものはあるだろうか?




人は他人を分かろうとする。




でも、分かり合いたくても分かり合えない。



人は他人を分かろうとしないこともある。





分かり合えなくても分かり合いたい。





同じように生まれたのに、何で人はこんなにもすれ違うのだろう?





結局、皆自分が一番可愛いんだ。




自分が不幸でなければ、他人の不幸なんて他人事なんだ。





だから、非情になれるんだ。





──私もそんな人の一人なんだ。




でも、彼だけは違う気がする。





「……申し訳ありません……」




悔しそうに唇を噛み締め、頭を下げ続ける彼だけは。




苦しみも悲しみも吐き出せず、泣くことも出来ない彼だけは──。





< 304 / 541 >

この作品をシェア

pagetop