紅の葬送曲
この世の中に人以上に怖いものはあるだろうか?
人は他人を分かろうとする。
でも、分かり合いたくても分かり合えない。
人は他人を分かろうとしないこともある。
分かり合えなくても分かり合いたい。
同じように生まれたのに、何で人はこんなにもすれ違うのだろう?
結局、皆自分が一番可愛いんだ。
自分が不幸でなければ、他人の不幸なんて他人事なんだ。
だから、非情になれるんだ。
──私もそんな人の一人なんだ。
でも、彼だけは違う気がする。
「……申し訳ありません……」
悔しそうに唇を噛み締め、頭を下げ続ける彼だけは。
苦しみも悲しみも吐き出せず、泣くことも出来ない彼だけは──。