紅の葬送曲


「奴らだけが言うなら信じられないが、菖もそう書き遺している。信じるしかないだろうな……」





寿永隊長は顔に腕を乗せたまま答えてくれた。




……彼は自分を責めているのだろう。





自分が命じた任務で小鳥遊さんが命を落としてしまった。





自分が命じなければ死ななかった……。





そう思っているんだと思う。





小鳥遊さんが亡くなったのは寿永隊長のせいじゃない。





私は寿永隊長が寝転がるソファーの脇に膝をつくと、彼の頭を撫でる。





「……何の真似だ?」





顔に乗った腕を退けることなく、彼は問うてくる。




撫でている理由は自分でも分からない。





でも、こうでもしないと彼は人に甘えない気がする。




本当は泣きたいはずなのに一人で全てを背負い込んで、苦しんでいる。





そんな彼だからこそ小鳥遊さんは──。






< 311 / 541 >

この作品をシェア

pagetop