紅の葬送曲
「小鳥遊さんは幸せだったと思いますよ……」
七砂さんも言っていたけど、小鳥遊さんは幸せだったと思う。
命を懸けて仕えた人が自分を自分の死を悼んでくれている。
それは何よりもの供養だと思う。
「……菖は俺に仕えて幸せだったのか?」
「はい」
「……死ぬと分かっていて助けなかった上司に仕えて本当に幸せだったのか?」
「はい、きっと」
彼の問いに答えていると、顔に乗せている彼の腕の隙間から頬に涙が伝うのが見えた。
「お前は……浅井は俺に仕えられて幸せか……?」
「はい」
「……こんな人を信じられず、守れない上司でもか?」
私は彼の頭を撫でる手を止めた。
寿永隊長の声は弱々しかった。
そんなことない。
寿永隊長は私を守ってくれている。
貴方がいたから、守ってくれたから私は強くなりたいと思ったんだから。