紅の葬送曲


私は寿永隊長の頭を再び撫でた。




「……幸せですよ。貴方がいなければ、今の私はいませんから」




今の私がいるのは彼のおかげだ。





彼がいなければ、私は死を選んでいた。





自分の出生を、実父を、紅斗を、世の中を恨んだまま死んでいた。





でも、彼がいたから私は此処まで来れた。




「俺の周りは馬鹿ばかりか……、本当に……」




呆れたような声と共に、寿永隊長の堪えるような嗚咽が聞こえた。




堪えないで思い切り泣いて欲しかった。





でも、思い切り泣けないのは彼が全てを一人で背負い込んでいるからだ。




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