紅の葬送曲
何処にも行かない──。
彼の言葉が誰かをまた失うかもしれないと思う私の気持ちを和らげた。
彼の紡ぐ言葉一つ一つが私を安心させる。
「私、絶対強くなりますから」
「馬鹿、ゆっくりで良いって言っているだろ」
寿永隊長は私の頭を小突くと、また穏やかに笑う。
私はこの時、すっかり忘れていた。
彼が以前言っていた言葉。
『……残りの一年くらい俺の自由にさせてくれ』
そう、彼の命はそう遠くない未来に私の前から消えてしまう。
そんな肝心なことを私は忘れて、彼がずっと傍にいることを信じていた。
私は本当に馬鹿だ……。