紅の葬送曲
親は子供を生む生まないを決められるが、子供は親を選べない。
どんなに最低な親でも子供からすれば親だし、どんなに出来損ないな子供でも親からすれば子供だ。
それを揺るぎない真実だと知らしめるのが体に流れる血だ。
切碕はその血を使ってノートを書いた。
もしかして、そのノートの呪いを解く方法って……。
「紅斗、その方法ってまさか……」
俺は分かってしまったかもしれない。
紅斗の顔色が曇ったことも、知られたくないかのように遠回しに言っている理由も。
「鋭いなー、君は。さすがだよ、凌君」
紅斗は苦笑いを浮かべると、俺のデスクに寄り掛かって天井を見上げた。
「……仮に黒いノートに書かれたことを全て実行し切碕が蘇らせる時、奴の体を構成するのに血を引く者の血が必要になる」
……言うな。
「……つまり、仮に切碕が蘇っても血を引く者がこの世にいなければ良いんだ」
「それって……」
江も気付いたらしく、声を震わせていた。
「そう。僕と紅緒、摂紀兄さんが死ぬしか切碕の復活を阻止する方法がないんだ……」
紅斗はただ悲しそうに天井を見上げていた。