紅の葬送曲
紅斗の言葉に頭を鈍器で殴られたような感覚がした。
切碕の復活を阻止するには彼女達の命が消えるしかない。
彼女が……浅井が俺の前からいなくなる──。
その事実が俺に重くのし掛かってきた。
「あくまで呪いを和らげる本に書いてた一つの方法だよ。……まあ、他には無かったんだけどね……」
「お前、何故黙ってた?」
「言えるわけないでしょ?自分達が死ぬしか切碕の復活を阻止する方法がないなんて」
それもそうだ。
その事実を知れば、切碕の実子である三人は確実に命を狙われる。
皆のために死ね、そんな言葉を浴びさせられながら命を奪われる……。
惨すぎる……。
「凌君、君に頼みがある」
紅斗は天井を見上げていた目を俺に向けた。
「何だ?」
「もし、その時が来たら僕は死を選ぶ。でも、紅緒には生きて欲しいんだ。だから、紅緒のことは君に任せるよ」
泣きそうな顔をしているのに、赤い瞳は強い意志を宿している。
紅斗……、お前は卑怯な奴だ。
俺が浅井を殺せないと分かっていて、彼女を俺に任せようとしている。
彼女が生きていたら苦しむ人が増えるというのに、俺は彼女を殺すことは出来ないだろう。
何せ、俺は──。