紅の葬送曲
「……分かった。彼女のことは任せろ」
俺は拳を握りしめながら頷くと、紅斗は「ありがとう」と穏やかに笑った。
本当に卑怯な奴だ……。
「それと、アンジェロのことだけど……」
すると、紅斗は話題を今捕らえている元切碕一派の女に変えた。
「アンジェロ、あの女のことは──」
「信じないから安心しろ。それに、きっちり宣戦布告を受けてるからな」
俺が遮るようにいうと、紅斗と江は頭を傾げた。
つい先日だが、俺はあのアンジェロ・アッヘンヴェルにきっちり宣戦布告を受けている。
「Es ist zu einfach zu gähnen……」
「ドイツ語?凌君どうしたの、急に?」
「アンジェロ・アッヘンヴェルの宣戦布告だ。ムカつく女だ」
俺が吐き捨てるように言えば、江と紅斗は苦笑いだ。
多分、うちのメイドに爆弾を仕掛けたのもアンジェロ・アッヘンヴェルだろう。
指名手配されてる殺人鬼なんぞに突破されるなんて、寿永の名折れだ。
……きっちり落とし前つけさせてやる。