紅の葬送曲
「さすがは紅緒の親友。気の強い女だ」
彼女は目の前に立つ男の姿に顔をしかめると、体をデスクに預けた。
そして、その男に見つからないようにデスクの天板の裏にSDカードを張り付ける。
彼女は首を押さえると己の首から伝う温かい液体を手のひらに感じていた。
「な、んで……貴方が……」
震える声を押さえつけ、彼女は目の前の男を睨み付けていた。
この男は人の皮を被った悪魔だ。
親友もこの男の仮初めの姿に騙され、幼なじみとして慕っている。
この男が全ての元凶かもしれないのに──。
「早く……知らせないと──」
その場から再び逃げようとした彼女だったが、その体は突然力をなくした。
力をなくした体は後ろから大きく切りつけられ、フローリングへと倒れた。
「知らせないと……」
それでも、まだ意識のある彼女は這うようにして前に進む。