紅の葬送曲
「そんなに怖がらなくても凌は君に何もしないよ。アイツはああ見えて、優しいから」
そう言って、小鳥遊君は穏やかに笑った。
優しい?
私は前を歩く寿永隊長の背中を見た。
顔は見えないけど、纏う空気は優しいとは程遠い。
怖いと言えば怖いけど、どちらかというと近寄りがたい感じだ。
それは育ちが良すぎるせいなのか、それとも彼自身が持った雰囲気なのかは分からない。
ふと、寿永隊長がチラリとこちらを振り向いた。
「江、余計なことは言うな」
切れ長の目が有無言わせないほど冷たかった。
この人が本当に優しいの?
そんな疑問に苛まれながら、私は翔鷹の施設へと足を踏み入れた。