紅の葬送曲
「……まるで、子供みたいな寝顔ね」
すると、鋭い視線と共に女の人の声がした。
声がした方を見れば、そこには寿永隊長の母親である操様がドレス姿で立っていた。
「会場に凌の姿が見当たらないと思えば……」
操様は眉をひそめたまま、こちらへ近付いてきた。
腕を組んで私を見下ろす彼女の顔立ちは寿永隊長に似ている。
でも、寿永隊長の目元は彼の父親である寿永さんに似ているように思えた。
「……主人を殺したのは貴女ではなかったみたいね。濡れ衣を着せてしまったことは謝るわ」
寿永隊長が話したのだろうか?
操様は高慢な態度ではあるものの、謝罪をしてくれる。
「いえ……。疑われてもおかしくはない状況でしたので……」
「でも、貴女達双子のせいで主人が死んだのには変わり無いわ」
それは紛れもない事実だ。
寿永さんは幼い私と紅斗を安倍明晴から守るために命を落とした。
妻である彼女に恨まれてもおかしくはない。
「……私には分からない。何故、あの人も凌も貴女達を守ろうとしているのか……」
操様の呟きに私は目を見開く。
あれだけ高慢な態度だった彼女の言葉に戸惑いと悲しみが込められていたから。
すると、操様は私から寿永隊長に視線を移した。