紅の葬送曲
Ⅲ
──京が死んだ。
いや、違う。
殺された、安倍明晴に……。
「……帰っていたのか」
執務室のソファーに座って呆然としていると、寿永隊長が声をかけてきた。
「はい、たった今……。芦葉さんとの話は終わったんですか?」
たった今、私は小鳥遊君と一緒に京の葬儀に出て翔鷹に戻ってきた。
寿永隊長は芦葉さんと外せない話があったという理由で、通夜にだけ参加していた。
彼は「そうか……」と短く答えると、何処かへ行ってしまった。
一人執務室に残されると、嫌でも昨日の京の最期の姿を思い出してしまう。
……昨日翔鷹に戻った私達は制服に着替え、すぐに警察の官舎に向かった。
京の使っていた部屋は泥棒が入ったように荒らされていて、パソコンも電源が入りっぱなしだった。
部屋は荒れているのに、貴重品などは取られていなかった。
そして、京の遺体は──。