紅の葬送曲
「司馬琉介!」
翔鷹に着き、琉ちゃんがいるであろう二階の執務室にかけ上がると寿永隊長はドアを思い切り開け放つ。
執務室には小鳥遊君と紅斗がいて、琉ちゃんの姿はない。
「どうしたの、凌?そんなに息切らして……」
「江、司馬琉介は!?」
驚く小鳥遊君に寿永隊長は詰め寄ると、彼のデスクに手をついた。
「え、司馬君?彼なら──」
「あ、寿永隊長に紅緒。お帰りなさい」
ふと、執務室に隣する給湯室からティーカップの乗ったトレイを持った琉ちゃんが現れた。
その琉ちゃんの姿に、寿永隊長の動きは速かった。
「寿永隊長もお飲みになりますか特製のハーブ──」
「人殺しが淹れた茶なんて飲むかよ」
寿永隊長に低い声でそう言い放つと、琉ちゃんの持っているトレイをひっくり返した。
けたたましい音を立ててティーカップは割れ、ティーカップの中身が床に散乱する。
「凌君!?何して──」
そして、駆け寄る紅斗よりも速く彼はそのトレイをひっくり返した手で琉ちゃんの腕を掴んで捻り上げると、床に押さえつける。
全てが一瞬の出来事だった。
「ぐっ……」
腕を捻り上げられている琉ちゃんの顔は痛みに歪んでいる。