紅の葬送曲
そして、そのまま窓を突き破り、外へ逃走する。
「待ちやがれ!」
羽取さんがその後を追って窓から飛び降りようとする。
「羽取さん、追わなくて良い。どうせ、こうなると思っていた」
が、彼を寿永隊長が止めた。
「凌!お前、甘過ぎるぞ!?」
興奮気味な羽取さんに、彼は殴られた頭を押さえながら小さく笑った。
「……甘い?俺はそんなに生易しくないよ。……芦葉、やれ」
「了解です」
芦葉さんは寿永隊長の命令に頷くと、何やら唱える。
すると、遠くの方から男の人の悲鳴……、琉ちゃんの悲鳴が聞こえた。
え、何今の悲鳴?
私は寿永隊長の傍に寄り添いながらも悲鳴が聞こえた方を見た。
「あーあ、あの子可哀想に。今頃、術で口が無くなってるかもね」
ふと聞こえた佐滝さんの声に、私はびくりと肩を揺らす。
佐滝さんはいつの間に現れたのか寿永隊長の隣にいて、彼の頭の怪我を見ていた。
この人達、気配無さすぎてやだ……。
「大丈夫ですよ、引き裂く程度に押さえましたから」
いやいやいや、芦葉さん。
口を引き裂く程度って程度で済む話ではないと思うんですけど……。