紅の葬送曲


「それはね、周様が殺された日に逃げてきた紅斗を僕が逃がしたからだよ」





「え?」





「君も知っているだろうけど、≪作られた人間≫は遺伝子の欠陥なのか成長が著しく遅い。僕も藤邦最後の被検体とは言われてるけど、産まれたのはもう20年以上前だ」





20年以上前ってことは芦葉さんは何歳なのだろう?





見た目は20代前半だけど、実年齢はもっと上なのだろうか?





……ということは30代位に見える羽取さん達も見た目より遥かに年上と言うことだよね。





芦葉さんの説明で警察学校で習った知識を思い出し、藤邦の研究の技術の高さに驚かされる。





「あの時の僕は体は5歳児くらいだけど、頭脳は中学生くらいだった。だから、紅斗が何から逃げてきたのかは何となく想像がついた」





芦葉さんは昔のことを思い出したのか、少し悲しそうな顔をする。





「紅斗は余程辛い思いをしたんだと分かった。僕が味方だと分かると泣き出し、『大切な人が殺された』『妹を置き去りにした』『僕は卑怯ものだ』と言っていた」




あの時のことは思い出したから分かっている。





あの時に何で紅斗が逃げたのかは知らないし、聞く気もなかった。




ふと、紅斗と視線が合った。





でも、紅斗はすぐに視線を逸らされる。








< 409 / 541 >

この作品をシェア

pagetop