紅の葬送曲


「紅緒……」




話すことを考えていると、紅斗が私の方を見た。





「何?」




「あの時……置いて行ってごめん……」




声を震わせてそう言うと紅斗はうつ向いてしまう。





別に今まで気にしていなかったことだけど、謝れてしまっては聞かずにはいられない。





「何で私を置いて行ったの?」





「……分からない。でも、僕達は一緒にいたらいけないって思ったんだ。だから、逃げた」




「そっか……」




紅斗に置いて行かれた私は安倍明晴に記憶を改竄され、浅井秀人の養女として引き取られた。





記憶が無かったとはいえ切碕復活の時まで何の不自由もなく、生活していた。





でも、逃げ出した紅斗は芦葉さんが逃がしてくれたとはいえ、きっと苦労したと思う。




私は紅斗の傍に近付くと、目の前にしゃがんだ。






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