紅の葬送曲


「紅斗、ごめんね……」




「何で紅緒が謝るの?紅緒は何も悪くないよね?」




紅斗は困惑したような顔をしている。




でも、私は首を横に振った。





「私は寿永さんが……大切な人が殺されたときの記憶がない。でも、それは安倍明晴に消されていたから」




それどころか、私は寿永さんの記憶も紅斗の記憶すらもなかった。




でも、紅斗は……。





「忘れててごめんね……。辛い思いをさせてごめんね……、紅斗」




ふと、紅斗の赤い両目から涙が溢れた来た。




紅斗がどれだけ辛い思いをしていたのかは私には分からないけど、この涙がその辛さを物語っている。




私は紅斗を抱き締めると、背中をポンポンと撫でた。





こうしていると、やっぱり落ち着く。




どんなに顔が似てなくても、生きてきた時間が違っても私達は血を分けた兄妹。





「これからは何でも話して。私ももう守られるだけの子供じゃないから……」





紅斗は私の腕の中でコクリと頷いた。





……芦葉さんの言うとおり、私達は会話が足りないのかもしれないね。




でも、これからはちゃんと話そう?





私達は兄妹なんだから──。







< 412 / 541 >

この作品をシェア

pagetop