紅の葬送曲
「紅斗、ごめんね……」
「何で紅緒が謝るの?紅緒は何も悪くないよね?」
紅斗は困惑したような顔をしている。
でも、私は首を横に振った。
「私は寿永さんが……大切な人が殺されたときの記憶がない。でも、それは安倍明晴に消されていたから」
それどころか、私は寿永さんの記憶も紅斗の記憶すらもなかった。
でも、紅斗は……。
「忘れててごめんね……。辛い思いをさせてごめんね……、紅斗」
ふと、紅斗の赤い両目から涙が溢れた来た。
紅斗がどれだけ辛い思いをしていたのかは私には分からないけど、この涙がその辛さを物語っている。
私は紅斗を抱き締めると、背中をポンポンと撫でた。
こうしていると、やっぱり落ち着く。
どんなに顔が似てなくても、生きてきた時間が違っても私達は血を分けた兄妹。
「これからは何でも話して。私ももう守られるだけの子供じゃないから……」
紅斗は私の腕の中でコクリと頷いた。
……芦葉さんの言うとおり、私達は会話が足りないのかもしれないね。
でも、これからはちゃんと話そう?
私達は兄妹なんだから──。