紅の葬送曲
ふと、ディスプレイを見る凌の顔が穏やかなものになる。
そして、電話だったらしく、スマホを耳に押し当てた。
「もしもし。今?翔鷹の傍の喫茶店だ。そうか、今から戻る」
穏やかな顔を見る限り相手は浅井ちゃんだろう。
その証拠に、凌はそそくさと帰る支度を始める。
「俺は翔鷹に戻る。金は置いて行くから好きなだけ食べて来い」
そう言って凌は財布から諭吉を取り出すとテーブルに置いて上着を羽織り、喫茶店を出ていこうとする。
でも、何を思い立ったのかレジの所のショーケースの前で立ち止まると、店員に何かを注文した。
店員に渡された箱のサイズを見る限り中身はケーキ、恐らく浅井ちゃん達へのお土産だろう。
「ねぇ、小鳥遊君?」
すると、芦葉さんはニヤニヤしながら俺の隣に移動して来た。
「はい?」
「寿永隊長って本当にツンデレだよね。あの子のことが気になるのに表に出さないようにしてる」
芦葉さんはやっぱり鋭いな、凌の気持ちに気付いてる。
「凌自身は出さないようにしてるみたいですけど、分かりやすいですよね」
俺は苦笑いを浮かべながらハンバーグを口に運んだ。
「そういうところ、操さん似だよね」
「凌の前でそんなこと言ったら殴られますよ、芦葉さん」
ニヤニヤしたままの芦葉さんはパフェに乗っているイチゴのアイスを掬い、口に運ぶとそのままスプーンを咥える。