紅の葬送曲
アンジェロも切碕に心酔していた一人だが、安倍明晴程ではない。
何故、安倍明晴がこんな風になってしまったかはかつてからの仲間であるアンジェロにも分からない。
安倍明晴が変わってしまったのは切碕が小鳥遊天河と共に死んでからだ。
「ねぇ、楊蘭……」
アンジェロは壁に寄りかかった楊蘭に声をかける。
「何じゃ?」
「明晴ってあんな人だったっけ?」
「……分からぬ。あれが奴の真の姿なのか、かつての奴が真の姿なのか、妾にも分からぬわ」
「だよね……」
そんな二人の会話を琉介は何も言わずに聞いていた。
琉介は安倍明晴という男がどんな男だったのか知らない。
ただ、知っているのは切碕に心酔していたということだけ。
しかし、琉介には安倍明晴などどうでも良かった。
琉介が求めるのは切碕の復活。
切碕が復活したら、琉介の求めるものは無くなる。
琉介が切碕を求める理由は一つ。
友人と幼なじみを切碕の呪縛から解き放つ為……。
ただ、それだけだった。