紅の葬送曲


私の為に怒ってくれるのは有り難いんだけど、兄弟なんだから仲良く……ね?





紅斗と最近まで敵対していた私が言うのもなんだけどさ。






だって、寿永隊長と汀様は何の蟠りもないはずなんだから。





「汀、お前は周りに流され過ぎだ。あの人が何て言おうと気に留めることは──」





「そんなこと、母さんから逃げてる兄さんにだけは言われたくない!」





黙っていた汀様の突然の怒鳴り声に、寿永隊長は目を見開く。





でも、すぐに鋭い目付きに変わった。





「俺が逃げてる?俺はあの人と同じ空気を吸うのが嫌なだけだ」





「それを逃げてるって言うんだよ!母さんを避けて、現実から目を逸らしてるんだ!だから、母さんから愛されな──」




再び頬を叩く乾いた音がした。





頬を叩かれた汀様は呆然としている。




「お前……」





寿永隊長も豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしている。





何せ、




「汀様、言って良いことと悪いことがあるのは分かりますよね?それ以上の言葉は言って悪いことです」





汀様に平手打ちをしたのが私だったから。





いくら兄弟だからと言って、言って良いことと悪いことがある。





ましては今、汀様が言おうとした言葉は彼にとって一番聞きたくない言葉だろう。





母に愛されていない……。





誰よりも自分を愛してくれるはずの母に愛されていない。




それは子供にとって自分を否定されているのと同じだ。








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