紅の葬送曲
「……っく」
汀様は唇を噛み締めると背を向けて駆け出した。
「汀!」
寿永隊長が彼を呼ぶけど、振り返らず止まることなく走って行ってしまった。
汀様の背中が見えなくなると、寿永隊長は険しい顔で私の方を見る。
「お前、何故あんなこと……」
「もう寿永隊長の傷付いた顔を見たくないからです」
私は彼が傷付く姿を見たくない。
この人はもうたくさん傷付いてきた。
だから、これ以上は──。
ふと、寿永隊長の険しい顔が戸惑ったような顔に変わり、瞳が揺らいだ。
「参ったな、本当に……」
「?」
彼の言葉の意味が分からず、疑問符を頭に浮かべていると寿永隊長は私の髪に触れる。
細く骨張った指が静かに髪を撫でていく。
「……綺麗な髪だな」
私はショートボブだから髪は長くない。
だけど、寿永隊長はそんな私の髪に指を絡め、すいていく。
な、何で急にこんな展開に!?