紅の葬送曲
戸惑っていると、彼には楽しそうに目を細めた。
「こんなことで戸惑うなんて子供か」
「ど、どうせ、彼氏いない歴年齢ですよ!」
「ククク……、そこまで言わなくても……」
顔が真っ赤になっているのを感じながらも寿永隊長に抗議する。
てか、私、彼氏いたことないの暴露してるし!?
今になって自分の失態に気付き、項垂れた。
すると、寿永隊長は髪を撫でていた手を止めて、そのまま頬に触れてきた。
彼の冷たい手が頬に触れると、ビクリと肩が揺れた。
切れ長の目が私を捉えて離さない。
私もその目から目が離せなかった。
「浅井……、お前は──」
寿永隊長が何か言いかけると同時に、彼のスマホが鳴った。
……何というタイミングでの着信だ。
その着信のタイミングの良さに、寿永隊長の言葉が聞けずに残念な気持ちとあの少女漫画的な展開から逃れられて嬉しい気持ちだった。
でも、寿永隊長は不服だったようで、不機嫌そうな顔でスマホを取り出して電話に出た。
「何だ、汀。話す気になったのか?」
相手は汀様らしいけど、通話口から汀様の声は聞こえない。
その代わりに、
『翔鷹隊長の寿永凌だな?』
変声器で声を変えた男の声がした。