紅の葬送曲
──息をする。
それは当たり前のことなのに、何でこんなにも嬉しいのだろう?
──声が聞こえる。
それは当たり前のことなのに、何でこんなにも切なくなるのだろう?
──胸の音がする。
それは当たり前のことなのに、何でこんなにも泣きたくなるのだろう?
──生きていた。
その当たり前を失ったはずだったのに、彼は帰って来た。
変わらない強さと優しさを持ったまま……。
私の隣に帰って来た──。
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