紅の葬送曲


「……分かりました」





あまり納得は出来ないけど、僕は黙って彼女と紅緒の様子を見ていることにした。






「殺してくれるんですか……?」





アリス様の言葉に、紅緒は掠れた声で呟くと彼女の方を見た。





「良いよ。でもね、一つ教えてあげる」




「?」





「死にたくて人に殺されることを望むなんて甘えた人間がすることだよ」





彼女はソファーから立ち上がると、陽光が射し込む窓へと近付く。





「世の中にはたくさんの考えを持つ人間がいる。生に執着する人、死を望む人、人を生かしたいと思う人、人を殺したいと思う人……」





陽光が射し込む窓へと近付いたアリス様はレースのカーテンを開け、大きな窓の外に広がる青空を見上げる。





「……かつて私が愛した人は二人いた。一人は殺人に殺された。もう一人は死にたくないと願いながらも皆の笑顔の為に死を選んだ。世の中を絶望に落とそうとした殺人鬼と共に死ぬことを──」






殺人鬼と共に死んだ人?





まさか、それって江君の叔父の小鳥遊天河のこと?





つまり、アリス様は小鳥遊天河のことを好きだったということ──?





「君達二人は私の憎しみの対象だったんだよ……。彼らの……和真と天河の仇の子なんだから……」




そう言って、彼女は悲しそうに目を細めながら僕と紅緒を見た。







《紅斗side end》
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