紅の葬送曲
「何してるんですか、アリスさん!?」
ハッと我に返ったときには私は和泉に双子から引き離されていた。
私の目の前には未熟児として生まれた双子が生きるために必要な機器がある。
私は無意識にそのスイッチを切ろうとしていた。
「アリスさん、いくら切碕が憎くてもこの子達には罪はありません」
「でも、双子が生きていたらまた人が……。なら、誰かが殺さないと……」
「貴女は人殺しなんかになったらいけない。兄さんと天河はそれを望んでいない」
和泉はスイッチを切ろうとした私の手を強く握った。
和泉も切碕のせいで兄である和真と親友である天河を失っている。
それでも前を見て、生まれてきたばかりの切碕の子供達の命を生かそうとしている。
「……この子達を見てください」
和泉は私の手を引くと、もう一度双子の方へと連れていく。
未熟児で小さく生まれた双子は赤ちゃん用の呼吸器が付けられ、穏やかな顔で眠っている。
「こんなに小さいのに必死に生きている」
和泉は手袋をはめて消毒すると私にも手袋を差し出してきてはめさせる。
そして、静かに手を保育器の中へと入れた。