紅の葬送曲
「甘えて良い……強くなるのはそれからで良い……」
「え?」
「寿永隊長の言葉です。私はこうやって甘えたことを言って、全然強くなれないんです。強くなれない自分が嫌いなんです」
紅緒ちゃんはぐっと拳を握り締めた。
でも、何か決心したように顔を上げる。
「もう強くなるのは止めます。弱いままでも生きることを考えることにします」
さっきまでのくよくよした姿は何処に行ったのやら、紅緒ちゃんは芯の強い目で私を見てきた。
ふと、脳裏に周との会話を思い出す。
『アリス、俺も双子に会ってきたよ。お前が言っていた通り、辛い思いをしているようだった』
『私からも施設の方に注意はしてるんだけど、改善されなくてさ。逆に私が言うから駄目なのかな……』
『それもあると思うぞ。でも、あの子達は大丈夫だ』
『え、あんなに辛い思いをしてるのに?』
『だからだ。あの子達はお互いを大切に思っている。守っている。あの境遇じゃなかったらそうはならなかっただろうな』
『でも……』
『でも、あの子達はまだ子供だ。大人の力が必要だ、俺達が力を貸してやれば良い。まあ、必要ないかもしれないがな……』
あの時、周は嬉しそうに笑っていた。
多分、周はこの子達の強さに気付いていたんだと思う。