紅の葬送曲
同時刻、寿永本邸にて。
『なお、寿永凌さんの遺体は発見されておらず、翔鷹と警察は寿永さんが生きている可能性を──』
男性アナウンサーの言葉がそこで途切れる。
と同時にテレビが投げつけられたリモコンによって破壊された。
投げたのは先程テレビで取り上げられていた寿永凌の母親、操だった。
「嘘ばかり伝えるんだから……」
操は震えそうになる体を押さえつけ、デスクへと向かう。
そして、引き出しを開けて、一枚の写真を手に取った。
その写真には今は亡き最愛の夫と幼い頃の長男が映っている。
息子を膝の上に乗せ、息子の頬に自分のそれを当てて愛おしそうにする夫。
夫の膝の上で嬉しそうに夫の頬に手を伸ばしている長男。
二人共満面の笑顔だ。