紅の葬送曲
再度摂紀お兄ちゃんに促されて、私の前に来た汀様だけどうつ向いているだけで何も言わない。
私と彼の間に流れる何とも言えない空気に、
「ねぇ、私達席外した方が良いかな?」
「気遣いできるなんて珍しいね、志摩。そこだけはアリスじゃなくて、和泉に似たのかな?」
「……一飛さん、そこ≪だけ≫って強調しないでくれない?」
等と志摩さん達はこそこそと話している。
いや、寧ろ外さないで頂きたい。
切実に。
二人にされるのはかなり気まずい。
「浅井……さん……」
うつ向いていた汀様に急に呼ばれ、私はびくりと肩を揺らす。
「は、はい……」
気まずさからどもってしまう。
「兄を……返してください……」
「え……?」
彼の口から出た言葉に、私は自分の顔が青ざめるのを感じた。