紅の葬送曲


「汀様、待ってください!」





前を走る汀様は寿永隊長の弟だけあって、足が速い。





離されそうになるけど、私も足には自信がある。





それでも、追い付いたのは執務室から大分離れた翔鷹の入る外門でだった。






「何で追いかけてきたんですか?俺は貴女に暴言を吐いたのに……」




門に寄りかかりながらちらりと見てきた汀様に、私は膝に手をついたまま笑って見せた。






「分かりませんけど、追いかけないとって思ったら体が勝手に動いてました。刑事の条件反射ですかね?」





「そう……」




彼は私から視線を外すと、呆れたように小さく息を吐いた。





その姿は今は傍にいない上司の姿に重なった。





『お前という奴は本当に……』





そんな寿永隊長の声がしたような気がした。






「寿永た──」





「寿永汀だな」




寿永隊長の姿に重なった汀様に手を伸ばすと、野太い男の声がした。





汀様の背後には目出し帽を被った男がいて、周りもその仲間に囲まれていた。






< 466 / 541 >

この作品をシェア

pagetop