紅の葬送曲
「止めろ!」
そんな光景に耐えきれなくなったのか、汀様の静止の声が聞こえた。
「お前達が恨むのは政府と三名家だろう!?彼女は関係ないはずだ!」
「関係ないわけねぇだろ。翔鷹は政府と三名家の飼い犬。三名家の庇護下で甘い蜜を吸ってるクソどもだ」
男は煙草を握り潰すと、グリグリと頭を踏みつけてくる。
「……気に入らねぇんだよ、何もかも。飼い犬がいたら、真面目に警官やって来た俺らが馬鹿見たぜ」
この男は恐らく20年前以降に刑事をしていたんだろう。
そうじゃなかったら、こんなことは言わない。
「……馬鹿みたい」
私は男の足を掴むと、頭から退かそうとした。
「……何だと?」
不機嫌そうな男の声が頭の上からする。
「飼い犬飼い犬ってうるさいんだよ。そんなこと言ってるから馬鹿を見るんだ」
嘲笑うように言うと頭を思い切り蹴られた。
脳震盪を起こしたみたいにぐらぐらと視界が歪んだ。
「浅井さん!貴様らぁっ!」
腕を男達に押さえつけらている汀様がもがいている姿が見えた。