紅の葬送曲


パーカーを脱いだその人は私にそれをかけて、汀様の方を見た。





何故か、汀様はその人の姿に戸惑っている。





「何で……此処に……」





汀様の問いにその人は答えることはなかった。






ふと、頬を優しく撫でられる感覚がする。





朦朧とする意識とぼやける視界の中ではそれが誰のものなのかは分からない。





でも、小鳥遊君ではないことは分かった。






「誰……?」





私の問いに、ぼやける視界の中でその人が笑ったように見えた。






口がパクパクと動くと、その人は立ち上がって背を向けて歩き出した。





その場にその人を留めようとして手を伸ばしたけど、それは空を切る。





「待って……」




伸ばした手が下に落ちると共に私の意識は再び途切れてしまった。





……気のせいだったかもしれない。





でも、その人は確かに──。






『汀を守ってくれてありがとう、浅井』





と言っていた。





私を≪浅井≫と呼ぶのは彼だけ。





彼は……寿永隊長は生きてる……?







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