紅の葬送曲



「ん……ン?」





鼻を突く消毒液の匂いに、私はそっと目を開けた。




目の前には映るのは白い天井、耳に届いているのは規則正しい機械音。





此処は……病院……?





「紅緒、目が覚めた!?良かった……」





そう考えていると、目の前が白い天井から安心したような紅斗の顔に変わる。




「紅斗……?私は──いっつ……」





体を起こそうとすれば、全身に激痛が走った。




「紅緒!?」





「起きちゃダメだよ、紅緒ちゃん。骨は折れてないけど全身を打撲してるからね」





全身に走る激痛に耐えていると、病室に藤邦さんとその旦那さんが入ってきた。




どうやら、此処は藤邦の病院らしい。





その証拠に、藤邦さんの旦那さんのネームプレートには≪皆実総合病院院長 藤邦和泉≫と書かれている。






「いやぁ、汀君から電話来たときは驚いたよ。誘拐された上に暴行を受けて、全身打撲してるんだもん」




藤邦さんはベッドの傍にある椅子に座るなり、私の腕にある青アザを包帯の上からつつく。






< 473 / 541 >

この作品をシェア

pagetop