紅の葬送曲
Ⅲ
「ん……ン?」
鼻を突く消毒液の匂いに、私はそっと目を開けた。
目の前には映るのは白い天井、耳に届いているのは規則正しい機械音。
此処は……病院……?
「紅緒、目が覚めた!?良かった……」
そう考えていると、目の前が白い天井から安心したような紅斗の顔に変わる。
「紅斗……?私は──いっつ……」
体を起こそうとすれば、全身に激痛が走った。
「紅緒!?」
「起きちゃダメだよ、紅緒ちゃん。骨は折れてないけど全身を打撲してるからね」
全身に走る激痛に耐えていると、病室に藤邦さんとその旦那さんが入ってきた。
どうやら、此処は藤邦の病院らしい。
その証拠に、藤邦さんの旦那さんのネームプレートには≪皆実総合病院院長 藤邦和泉≫と書かれている。
「いやぁ、汀君から電話来たときは驚いたよ。誘拐された上に暴行を受けて、全身打撲してるんだもん」
藤邦さんはベッドの傍にある椅子に座るなり、私の腕にある青アザを包帯の上からつつく。