紅の葬送曲


「紅緒がそう思ってるなら僕もそう思うよ。何となく彼が死ぬのは想像できないしね」





紅斗は小さく笑うと、椅子に座り直した。




すると、病室のドアがノックされる音がした。




返事をすると、開いたドアから顔を出したのは摂紀お兄ちゃんと汀様だった。





「紅緒、体はどう?」





「体中痛いけど大丈夫。汀様は……良かった、怪我は無いみたいですね」





摂紀お兄ちゃんの言葉に頷いて、無傷でばつが悪そうにしている汀様に私は笑って見せた。





でも、それが逆効果だったらしく、彼は更にばつが悪そうにうつ向いてしまった。





えーと、これはどうするべき?





対応に困っていると、摂紀お兄ちゃんが助け船を出してくれる。





「ほら、汀。紅緒が困ってるからシャキッとしな」





摂紀お兄ちゃんは汀様の背中を軽く押すと私の前に来させた。





そして、椅子に座っている紅斗の腕を掴むと





「じゃあ、二人で仲良く話すんだよ。僕達はその辺彷徨いてくるから。行くよ、紅斗」




「え!?あ、うん」





二人で病室を出ていってしまった。






助け船じゃなくて、お節介だったようだ。






「「……………………」」





む、無言が辛い……。







< 477 / 541 >

この作品をシェア

pagetop