紅の葬送曲
でも、その無言の気まずい雰囲気は彼が口を開いたことによって解消される。
「浅井さん、助けてくれてありがとう……ございました……」
「へ?」
「それと……、今まで失礼なことを言ってしまってすみませんでした」
汀様は深々と頭を下げた。
「え、あ、いや……その……っわっと……!?」
突然のお礼と謝罪に戸惑った私は身ぶり手振りの変な動きをしているうちに、ベッドから落ちそうになった。
というか、落ちた。
「ちょっと大丈夫ですか!?」
汀様が慌てて私に駆け寄ってきた。
大丈夫だけど、全身青アザだらけだから痛かった。
「だ、大丈夫です……」
汀様に手を借りて立ち上がるとベッドに戻って、彼もベッドの隣の椅子に座った。
「兄さんから聞いてましたけど、貴女は少しそそっかしいみたいですね。よくそれで次席で警察学校を出られましたよね」
呆れたように笑う汀様の顔はやっぱり寿永隊長に似ていて、言っている言葉も似ている。
「寿永隊長、私のこと話してたんですね……」
「ええ。まめな人なので、俺のところに毎日連絡を寄越していましたよ」
ということは汀様は何もかも寿永隊長から聞いているのかもしれない。
恥ずかしいことも全て。