紅の葬送曲
「あ、穴があったら入りたい……」
頭を抱えると汀様は楽しそうに笑った。
彼が私の前でこんな風に笑ったのは初めてかもしれない。
それだけ彼が私に心を開いてくれた証拠なんだろうけど、急にどうしたのだろうか?
一頻り笑った汀様の顔から笑顔が消えると、彼はまたうつ向いてしまった。
「浅井さん」
「はい?」
「貴女は兄さんが生きていると思いますか?」
唐突な問いに私は一瞬戸惑った。
「はい。あの人は生きてますよ、絶対」
でも、そうすぐに答えた。
実を言うと確信はない。
それでも、紅斗の言うとおり寿永隊長が死ぬことが想像できない。
私は即答に汀様は目元をぐっと袖で拭うと、顔を上げた。
「浅井さん、兄さんのことを信じていてください。貴女が信じて待っているだけであの人は救われるはずですから」
汀様の言葉に頷くと、彼は満足そうに笑った。